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  一歩を大切に
                つじ 加代子
 僅かな蘭の芽が、お互いに助け合い励まし合って、楽
しく語らいながら自分を磨く場を――ということで始ま
った『水韻俳句の広場』。新和歌浦に野澤節子主宰をお
迎えしてから、既に十八年の歳月が流れました。その間
明るく心ゆたかな仲間に恵まれて、蘭の若芽はすくすく
と伸び、新しい株をしっかりと地に拡げつつあります。
十八年間の足あとは、「水韻」「吟」「白蓼」と、その
時々の歩みを小冊子にまとめて来ましたが、このたび、
手づくりの機関誌を定期的に、という若い人々の嬉しい
提案に、その編集一切の仕事をお任せすることに致しま
した。 どんな時でも《継続する》ということは容易な
ことではありません。この一歩を大切に、みんなで育て
ていきたいと念じております。
 近頃は、歳時記という玉手箱に入っている季語に実際
に接し、おどろき、喜び、はっと息を呑みこむ機会によ
り多く出会いたいと思っております。野澤主宰の提唱さ
れる「身ほとりや、大自然の中に存在する季語を、自分
の血(五感)で洗う」ことの大切さを身に沁みて感じて
いるからです。この『水韻俳句の広場』に集まる誰彼の
素敵な笑顔と力強い足音を期待しています。
   平成六年九月一日
 
      青  鵜            
                    つじ加代子    
 
 Y細き朝の青鵜に麦茶沸く
 
 修羅となるまでの涼しき鵜の眼    
 
 水浴びる喉太の鵜の甘え鳴き    
 
 昼の鵜に雄ごころのなき水あそび
 
 山清水ひきたる槽に鵜を馴らす
 
 大旱鵜小屋に白き糞乾び    
 
 湯をつかふ鵜匠に峡の星涼し    
 
 
 
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
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                    つじ加代子
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
 
人声に疲れの見ゆる夕牡丹     坂口 年美
 
野の花を活く風鈴の音の中     武内千佳子
 
羽化了る蜻蛉に朝日のぼりけり     森井美恵子
 
ベランダに天草を干し声若き     山西 慶子
 
刃剣に刃紋浮き出る新樹光     島田 千鶴
 
茶柱の立ちて佳き日の白ハンカチ     前中 照子
 
せせらぎはピッコロの音蛍の夜     名方佑輝子
 
 
 
 
夏蕨水音絶えぬ宿に泊つ     辻  多恵
 
青蘆に夕風うつる湖の宿     臼井 好子
 
内川の子安地藏や枇杷熟るる     神谷 昌子
 
梵字みな流れるごとし青嵐     糸川 佳寛
 
看護婦の白服まぶし菖蒲園     北林 弘子
 
木目たつ分厚き椅子の梅雨じめり     みねの八重
 
桜餅買ふよ佛の日なりけり     和田八栄子
 
はつ夏や乳の匂へる嬰の口     紺谷永里子
 
凌霄花在所言葉も聞き馴れて     福井冨美子
 
喫茶店笑ひの渦の水中花     井上ひろ子
 
菖蒲見し夜のブラウスするり脱ぐ     藤齊 まり
 
 
 
 
 
 
水撒いて横丁の風すきとほる     上辻 泰子
 
さりげなく交す会釈や夏遍路     水島 泰子
 
ファスナ―に咬み癖のつき薄暑かな     山田 英子
 
トランペットの曲切れ切れに立葵     水田 和美
 
浄域に人語遠のき竹落葉     佐々木俊雄
 
大甕に金魚の沈む昼下がり     服部よね子
 
青葉風みな顔ちがふ童子仏     横岩多鶴子
 
工夫らの緊まる裸に眼を奪らる     溝口 圭子
 
城山に律せり上げて虫の声     久野美彌子    
                                       坂口 年美
                      ひらひらと山の日返す花水木  
                      茶の席へ枝折戸開ける濃山吹 
  四方の風あつめて涼し浮見堂
  人声に疲れの見ゆる夕牡丹   
  竹林を拔け来し風に縁端居
 
                    武内千佳子
  すぐりの実ガラス細工のごと透けて
  昼ぐもり息ととのへる滝の道
  あぢさゐの幼き毬に雨斜め
  頭の中からつぽにして守居見る
  野の花を活く風鈴の音の中
 
                   森井美恵子
  とんぼうのいのちはじまる武者震ひ
  羽化了る蜻蛉に朝日のぼりけり
  青梅Vぐ子の声はずみ身も弾み
  子が鳴らす海の色透くラムネ玉    
 
                   山西 慶子
  ベランダに天草を干し声若き 
                      捨苗の箱舟めけるざんざ降り         
                      休刊日郵便受けの梅雨ふかし         
                      梅雨晴間レインハツトの花模様        
 
 
 
                島田 千鶴                  藤齊 まり
十薬に身うごきとれぬ陶の蝦蟇         菖蒲見し夜のブラウスするり脱ぐ
刀剣に刃紋浮き出る新樹光           女といふ肩書きうれし芥子の花
釣り堀に無言のつづく夏帽子          美人絵の去年の汚れ初団扇
老い先の話こまごま桜桃忌           目薬をさす口開き青嵐
                 前中 照子                  林  柚香
夏料理おしぼり熱くもてなさる         雨雲の遠嶺に昏き溝浚へ
茶柱の立ちて佳き日の白ハンカチ        水虫や漢初老の独り者
老い母の返事ちぐはぐ蛍の夜          酢を利かす小鯵の鮨は笹に巻く
白蝶のちらつく寺や緑満つ           遠蛙張るや田水の満を持し
                 伊都 貞子                  嶋   澄
楠若葉陽のこぼれつぐ楠子墓 (湊川神社)       ゴンドラを追ひ越してゆく夏燕
楠新樹祢宜の衣に風生るる           梅雨に入る磨き拔かるる奈良格子
緑さす嬰のふり上ぐる堅拳           石室や香水の濃き女を背に
さくらんぼひと日の長き麻疹(はしか)の子        黒揚羽縺れて止まる晶子歌碑
                名方佑輝子                  井上寿々子
峡の村瀬音にひそむ河鹿笛           水韻や夏日ゆらめく坐禅窟
せせらぎはピッコロの音蛍の夜         舟虫や火を起こしゐる屋台店
鬼瓦の機嫌うかがひ蔦茂る           堂青葉白肌まぶし弁財天
南天の花こぼれつぎ女逝く           今年竹袴きりりと弓道士
                野口 節子                  井谷かほり
娘の許へ乗替へ二つ植田風           青梅や亡父の意見のわかる歳
雨降れば雨の彩して額の花           芍薬に傘かけ了へてざんざ降り
蛍狩ほどよき闇に愚痴を聞く          農具小屋建つ花合歓を天蓋に
夜濯やふつと無心に水の音           木蔭なるあぢさゐ特に藍深し
                上野みのり                  水島 泰子
熱の子のアイスクリ−ムに目が動く       軒深く吊り玉葱の匂ひ濃し
良き日なり子のあさがほの一番花        さりげなく交す会釈や夏遍路
ランドセルの形に汗かき子が帰る        打水の庭石つたひ朝薬師
空梅雨や五日持ち続ぐ紙袋           新築の庫裡開け放つ青葉光
                上辻 泰子                  山田 英子
水撒いて横丁の風すきとほる          トマト熟れなかなか止まぬ立話
夕顔や格子窓より魚焼く香           ファスナ−に咬み癖のつき薄暑かな
大ジョキ呷れば空に夏の月           雑念の浮かんでは消ゆソ−ダ水
流れ星じつとしてゐるに堪へられず                       水田 和美
                 石田 すづ  トランペットの曲切れ切れに立葵
ひるがほに潮風やさし岬のみち         入梅やさざえの花器に野草挿す
ときめきて掌中に解く落し文          ガスレンジ・鍋磨きあげ梅雨ごもり
青葉風海の没り日に佇ちつくす                         佐々木俊雄
草原の丘ゆるやかに月見草           浄域に人語遠のき竹落葉
海女着干す潮騒のみの昼寝刻          仏桑花オレンジの襞解きはじむ
舟担ぐ肩の逞し青葉潮             ちんまりと茂りの中の空き巣かな
                服部よね子                  溝口 圭子
木槿一花窓辺にひらき母は亡き         工夫らの緊まる裸に眼を奪らる    
大甕に金魚の沈む昼下がり           梅雨晴間パリジャンヌのごとパン抱へ 
朝涼し雀降りたつ墓の道            皆とゐて無聊の真昼梯梧燃ゆ
                佐々木さち子                  森  幸子
鮑海女藍透きとほる伊豆の海          初蛍闇のそこひに瀬音湧く
霊宿るかに竹道の座禅草            田水張り千の蛙の夜々の声
外の湯に下駄ならしゆく新樹の夜        一すじの川闇ゆすり牛蛙
                上西佐和子                  武川 歌子
手習ひの手本のひかる青田風          夕映えやひとり住ま居の古簾
男梅雨雲を引き込む紀伊の海          寺障子開け放さるる薄暑かな
青梅雨や豆腐の桶の水明り           車窓いま植え田明るき丹波みち
                横岩多鶴子                  久野美彌子
青葉風みな顔ちがふ童子仏           灯を慕ふ虫にはっしと守居跳ぶ
吐く息も青葉に染まり磴百段          神覚めて霧吹きあぐる大蛇X
航跡の一すじ顕ちし青葉潮           城山に律せり上げて虫の声
                中谷智恵子                   辻  多恵
退院を見送る峠風薫る             ログハウス緑の風と口笛と
青嵐空より声の届きけり            青蘆に夕風うつる湖の宿
夏蕨水音絶えぬ宿に泊つ            浮苗挿す植田に光あそばせて
                小山ちとせ                  西島 わか
黄梅庵囲みて竹の皮脱げり           逗留にぶらさげて来し金魚鉢
瑠璃揚羽ついて離れぬ利休像          隣宅に客のあるらし網戸の灯
校庭のポプラ新樹に風遊び           耳鳴りの更に苦になる熱帯夜
                北畑みち代                  神谷 昌子
西東雨また雨の梅雨の旅            父の日や亡父愛用の銀煙管
異人館貴婦人めきし夏帽子           玩具一つとてなき我が家梅雨寒し
蚊遣香ひとつ布団に孫と寝る          内川の子安地藏や枇杷熟るる
                 中嶋美恵子                  糸川 佳寛
菜殻火の夕日へつづく段畑           袋角触れて親しき視線受く
梅雨茫々檜山の底に家二軒           梵字みな流れるごとし青嵐
激しさに本音のみゆる青嵐           岩清水溢れるごとく時間欲し
                貴志 昌子                  上山タカ子
松の芯一気に伸びて旅つづく          明け易し猫に起こさる日々続く
旅立ちや風新しき夏立つ日           緋牡丹のどっと崩るる雨後の風
小机にひとりの音や夜の新樹          雨の夜をすぎて嵩増す萩若葉
                臼井 好子                  服部 荘三
あぢさゐの藍の澄みゆく山の寺         朝に雨昼に晴間の梅雨日和
花南天ほろほろこぼれ裏戸口           亡母の声耳に残れる苺畑
初蛍リズムをつくり火を灯す           腕くみて農夫見上ぐる梅雨の空
                 北林 弘子                  小畑まさ子
薫風や嬰手をしかとふりひろげ         白鷺の群れて代田に影落す
水滴のゆるるくもの囲残しをく         降る雨に雫の光るくもの糸
看護婦の白服まぶし菖蒲園           母の忌の近づき植田広がりぬ
                みねの八重                  落合 加寿
女貞花の香にむせかへる朝厨          虹の橋瞳孔開く眼に淡し
菖蒲田の長靴の跡ふやけをり          山彦の縷縷響きくる朴の花
木目立つ分厚き椅子の梅雨じめり        踏まるるも小花逞し五月の野
                角野 幸子                  紺谷永里子
部屋中を歩く塗下駄・浴衣の子         乳をのむ嬰の手やはらか初夏の風
行きすぎて虫に刺さるる木下闇         満開の牡丹園ゆき外気浴
筍梅雨の水嵩増せる吉野川           はつ夏や乳の匂へる嬰の口
                和田八栄子                  山本 恭子
休耕にするといふ田の草を刈る         九十九折冷房バスの一人客
桜餅買ふよ佛の日なりけり           合歓咲いて一日の旅を山里に
五月晴白くかがやき靴乾く           炎昼を労わられをり里の土間
                寺脇恵美子                  宮田 延子
夕厨とれとれ自慢の小鯵割く          栴檀の花にそよぎて風甘し  
庭畠の朝日まみれに黒揚羽                           小谷芙美子
                浦野伊津子   軒借りてくちなしの香にしばし酔ひ
燈台の白のまぶしき夏の海            潮騒や蟹むっくりと爪あぐる
咲きはじむ月下美人に友も来て                         高田 衣世
                田代 絢子   梅雨晴間巣立ち間近の雛の声
梅雨寒し母に手渡す即効薬            子等かけてコスモス園に風渉る
紫陽花に癌を封じる軒厠                            井上ひろ子
                矢間すみ子   葭簀売る声の遠のく昼下がり
初蝉の声もどかしき朝厨             喫茶店笑ひの渦の水虫花
仕事場の槌打つ夫の玉の汗                           西河 寿江
                福井冨美子   枇杷熟れて幼き孫の顔和む
紫陽花を嫌ひし父の忌の近む           日暮くる麓へ急ぐ秋遍路
凌霄花在所言葉も聞き馴れて
                山下 博司
遮断機の下りる間あふぐ夏の月
初夏や沈む夕日の地平線
                川口 洋子
ジャスミンの香りほのかに勝手口
夏ざぶとん友との会話はずみをり
 
 
選 後 評 (七、八、月例会)  田村一翠
                      
 
祇王寺や筍梅雨に青深む      嶋   澄 初鰹炊きたて飯の粒ひかる(、)     上辻 泰子
祇王寺≠フ感じがよく出ていると存じます。  「ひかり」と軽くおさえた方が、初鰹
                       が活きてくるかと存じます。
旅衣つるし筍梅雨にあり      貴志 昌子
あり≠フ措辞が筍梅雨の季語を        高きより烏が見張る溝浚へ     名方佑輝子
うまく活かしています。            この烏を把握したことでおもしろい作品に
                       なりました。
青梅や多く語らぬ父と子と     山田 英子
男同志とはこのようなものでしょうか。     溝浚へしてひとすじの空流す    坂口 年美
季語の青梅≠ェよかったと思います。     「水を言わずに水の流れが出ていて、
                       そして視点を空へむけたために一句に
木漏れ日を自在に散らせ(、、、、、、)あめんぼう 中谷智恵子 拡がりが出ました。
「散らせ自在に」の方が、あめんぼう
の方が主になるとると思います。        青嵐木組みの粗き峡の橋      横岩多鶴子
                       木組みの粗き」に作者の発見があります。
更衣歳々かろき身のほとり     伊都 貞子
しみじみとした味わいがあります。作者の    身ほとりを涼しく暮し一人膳(、、、)    上辻 泰子
実感でしょうか。               このきっぱりとしたさまに心をひかれました。
                       「一人の(、)膳」としたらどうでしょうか。
 
河鹿聴く闇しっとりと親しくて   上野みのり
中七の闇しっとり≠ェ新鮮な感覚と
思いました。
 
梅雨晴間採血了へし身に眩し    佐々木俊雄
下五で出ています。
 
玉涼し傘寿すぎたるネックレス   つじ加代子
この若々しさを大切にしたいものです。
 
〈添削〉                  
物事のうまくゆきそな(、、、、)心太     山田 英子 
そな≠ヘ、やや川柳臭くなるかと       
思いますのでゆきそう(、、、、)≠ノしてみました。   
                       
青嵐や大路に(、)僧の青つむり     山西 慶子 
を≠ニすべきではありませんか。       
この場合に≠ヘ説明的だと思います。     
 
ふるさとや(、)新茶の届き恙なし    伊都 貞子 
やはりより≠ナはないでしょうか。      
そして恙なし≠自分に引きつけた      
方が良いと存じます。             
 
          で俳句を全然考えないという
          ことは少なかったと思います。
           かと云って上達したと云え
かにさんの     ばで表現しようとしている。  ませんが私の生活のその時々
   かくれんぼ  『心で感じたことを、やさし  の句が残っています。それら
        上野みのり  いことばで的確に。』という  は例え稚拙な句であっても懐
 子どもに、    俳句の原点を再確認させられ  かしくいとおしくさえ思いま
はっとさせられる  たことばであった。      す。
ことがよくある。                  句の中に幼かった子どもが
この間も      たからもの     在りし日の夫が姑がいるので
夏人が「かにさんが          伊都貞子   す。これはそのまま私の歴史
もういいよっていっ       十年ひと昔と云います。今  といえるでしょう。また先生
てるよ こっちのかにさんと  はもっと短いサイクルで、ひ  はじめ、出合った多くの句友
かくれんぼしているよ。」と  と昔、ふた昔と云うかも知れ  みんなの私の゛たからもの゛
知らせにきた。見に行くと、  ません。           です。
なるほど、一匹はハサミを目  私が俳句と出合ってから十余   今までに仕事や家事以外に
の辺に付けてじっとしている。 余年、いろいろのことがあり  自分の意志で十年余りも続け
 もう一匹は、岩に隠れたり、 ました。人生の中でも変化の  てきたことは他にありません。
様子を窺ったりしている。   多い歳月でした。   十年一日の如くで勉強が足り
なるほど、言われて見ればそ   その間、日々    ませんが、でもこれからも生
の様に見える。三才児は三才  の単位では俳句    活の一部として俳句を考えて
児の語いの中で、自分の感じ  を忘れていても    いきたいなあと思っています。
たことを一番ぴったりなこと  月いや週の単位
 
病院つれづれ    る。蛙の顔に水  隣の水虫野郎は、きっと淋し
゛水虫野郎゛    だ。私が主人と  くて自分に取憑いた水虫への
         林 柚香   小声で何か話す  うつ憤の捌口を撒きちらして
 腸閉塞になるかもと医者に   と、間髪を入れ  ゐるのかしら、時々足が痛い
宣告され取るものも取敢ず生   ず主人が答える  痛いと医者や看護婦に甘えて
協病院へ嫌がる主人を息子と   前に返事をする。 いる声が聞こえる。
二人で血圧が上がるほど説得  隣りとの間にはカ−テンの仕  カ−テンの間から背を丸め頭
して二時間内に入院した。   切りがあるから、姿は見えな  を抱く様に眠っている彼の姿
 六人部屋で明るくて風のよ  い。隣りの神経がカ−テン越  が見える。何か優しい言葉を
く通るのがなによりの部屋で  しに目に見えないフェンスの  かけてあげるべきと思いなが
あった。三日間の絶食と点滴  ようにはりめぐらせている様  ら、私も血圧が二00に上っ
強烈な下剤とのお陰で溜まっ  な気がする。付き添いベッド  た。あたふたと主人共ども風
ていたものがすっかり出たの  を置く空間は狭くて隣のベッ  透る五月の街へ退院の車を走
が、五日目位であったか。ほ  ドと平行してきちきち眠ると  らせた。
っとして改めて隣近所に目が  他人の寝息が耳の横で聞こえ
行って気がついたら、隣りの  る。あわてて向きを変える。  葛城の遠嶺のうるむ
ベッドに初老の男がゐた。独  息子達が見かねて個室の差額         梅雨入りかな
り者だと云うことで面会人も  を負擔するからと申出てくれ
あまり来ない。水虫を手術し  たが、生協病院では重病人と
て自分の皮膚を移植し、もう  医者が判断して、初めて二人
半年あまりになるが快くなら  部屋に入れてくれるシステム
ないと云う事だ。言葉がはっ  なそうだ。幸か不幸かその時
きりしないとにかく動き廻る  分から主人の方は帰宅出来そ
時々若い看護婦に叱られてい  うな気配になってきた。
 編集後記

◆ 平成に入るまで何冊かの『吟』(機関誌)を出して
 きたが、それが何時の間にか『白蓼』という簡単な会
 報形式のものに移行し、私自身の多忙からそれも覚束
 ない状態になって来ていた。一人で物事を永続させる
 ことはとても難しいことである。
  このたび、スクラムを組んで若いグル−プの方々が
 とだえていた機関誌を復活させるべく動きはじめてく
 ださる事になった。手づくりの機関誌゛水韻゛の出発
 である。みんなで理解し合い、協力しながらみんなの
 ゛和歌山蘭の会゛が、益々楽しいグル−プの輪を拡げ
 そしてひとり一人もその中で着実に育っていって戴き
 たいと希っている。
                    (加代子)

◆ 今回、機関誌『水韻』の発行にあたり、力不足なが
 ら私たち七名の者が、経験の乏しいことも顧みず、編
 集の任にあたらせて頂きました。会員各位のご理解と
 ご協力により、充実した機関誌を目指して、これから
 も努力を重ねたいと希っています。
    糸川 上野 服部 前中 溝口 
    森  森井             (順不同)

   募集規定

・水韻作品七句 つじ加代子 選
・封筒表に水韻作品と朱書のこと
・特別作品十五句及び評論随筆等
       採否は一任のこと

・締め切り 十月末
・送 先  〒六四一 
 和歌山市西高松一の一一の一八
        服部よね子 宛

 機関誌水韻九月号 第一巻
 平成六年九月一日 発行
 編集兼
 発行人    つじ加代子

 水韻発行所
 〒六四一 和歌山市福島二六八
 5〇七三四(五一)八七三三

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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