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平成4年
 
雷去りて蟹這いあがる眼鏡橋
子兎の人により来る秋の暮れ
秋深し子をまた宿す兎かな                  
少年の耳となりゆく蝉の声          
木の実降る山かき乱す光の子                
先んじて揺れる絵馬あり初嵐                 
奥琵琶の湖に軒出し吊し柿
 
平成5年
水泡の影を追ゐゆく上り鮒
花冷えや深き眠りの美女ミイラ      
道涼しここ関門の水底ぞ
さそり座や月の欠け初む五月闇
涼しさやビンの中なる繭の糸 
文芸まつりにおいて「ニュース和歌山賞受賞」
平成6年
雷響く磔像を守る耶蘇の村
ロザリオの象牙煤けし莢豌豆    
筍梅雨先師の墓の直立す              
袋角触れて親しき瞳かな
梵字みな流れるごとし青嵐   
涼風や白き大橋海跨ぐ
乙女らのはしゃぐ会話へ花火爆ぜ
蝉の眼の透明にして死に給ふ
蓮咲いて風集まりぬ法の池  
白蕾の蓮の葉陰を突き出むと
条の冬陽を入れし梧陵墓所
 
平成7年
春昼を深々と航く油送船
春寒や兎寄り癖つきしまま
自転車のベル鳴らしゆく花城下
無口なる海女の手に噴く焼き栄螺
春泥や長靴大き一年生
 
平成8年
寒昴常あるごとく葬終はり
冷たさは天より降りし葬の道
青首の大根を引きし仏頂面
子うさぎの数増えてをり松の内     句会風景 つじ加代子先生(中央) 私(右)
春寒し寄り癖つきし兎の仔
曳船の幾つ過ぎゆき鳥帰る
春遅し兎に重き風つのり
浅春の閉門早き動物園
水温む雲は河口へ動き初む
壜底に歪む青空ラムネ飲む
泳ぐ子にプール大きく揺れ始む
虫鳴くや皆それぞれに孤独守る
本積んで「燈火親し」を恥じらへり
寺坂を上れば紅葉多宝塔  
作務僧の黙して掃ける朴落葉
寒稽古終へし少女の髪解かれ
 
平成9年
海見えて笑う声あり蜜柑山  
寒林に深く沈みし施無畏寺  

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